うなだれるあたしに、
「あら。噂のつばさちゃんだわ」
聞いたことのない声がした。
女性にしては少し低めで、芯が通った声だ。
振り返ったあたしは……
言葉を失っていた。
だって、振り返った先にいたのは……
なんと、
「早瀬純……」
だったのだ。
相変わらず綺麗な顔で、その長い髪をなびかせて、早瀬純は立っていた。
腕を組んであたしを見下ろし、挑発するような笑みを浮かべながら。
彼女を見ると嫌な胸騒ぎがした。
昨日はかっこいいとあたしをドキドキさせた早瀬純。
今日はすばるくんとの熱愛のことしか考えられない。
この腕ですばるくんに触れたんだ。
この顔ですばるくんに笑いかけたんだ。
どんな話をしたんだろう。
どんなことをしたんだろう。
考えるだけで、胸がズキズキと悲鳴を上げる。
こうやって、前に立つとよく分かる。
比べ物にならないほど、早瀬純はいいオンナだ。



