「はじめ、地下道ライブのすばるが、ダサ倉だと分からなかった。
でも、ふとしたきっかけで知ってしまって……
俺は奴のファンになったんだ」
圭吾さんはそう言って、コーヒーを飲んだ。
そして、これ苦いなと言う。
ブラックコーヒーだから苦いに決まっているのに。
この人、もしかして天然なのだろうか。
「俺は高校に入ってバンドを組んだ。
ドラムのHIROとベースのJUNと。
初めは俺がボーカルをやっていたけど、なかなか思い通りにいかなくて。
久しぶりに通った地下道には、まだすばるがいて。
さらに磨きがかかったその声にやられてしまった」
あたしは、初めて聞くすばるくんの話に胸を焦がした。



