夢中になった。
少し歪んだギターの音に、複雑なリズムのドラム。
地響きのようなベースに、その歌声。
少しハスキーで甘くて切なくて。
あたしの心を掴んで離さない。
そして、ステージに立ち、観客を見下ろしながら歌う彼から目が離せない。
かっこよくて、キラキラ輝いていて、甘くて切ない瞳で遠くを見る。
「改めまして、sandです」
彼の言葉に地面が揺れた。
みんなが悲鳴を上げ、そのライブに夢中になった。
やっぱり彼は凄い。
こうやってステージ上にいると、手が届かないような人だと再認識する。
でも……
あたし、付き合ってるんだよね?
彼女なんだよね?
彼に見惚れていた。
そして……
ふっとこっちを見た彼と……視線がぶつかった気がした。
あたしの大好きな甘い瞳でこっちを見た気がしたんだ。



