あなたがいそうな場所は、全部探した。



あなたがよく立ち寄るコンビニも。


たまにふたりで行くカフェも。


前に話してくれた仕事先も。


小さい頃よく遊んだ公園も。



それなのに、どこにもいない。


目撃者さえもいない。



「どこに行っちゃったの?お兄ちゃん……」



もう何日こうして探しているんだろう?



今日も何ひとつ収穫なしに、日だけが暮れてしまった。


真っ暗な路地に佇む私。


5月のこの時期、まだ夜に吹く風は肌寒いというのに、私の額にはじっとりと汗が滲む。


近くの街灯がチカチカと点滅していて、虫がぶつかる嫌な音がする。



もう諦めるしかないのかな……。



そう思った時、道の向こう側からヘッドライトの光に照らされ、眩しくて咄嗟に手で光を遮った。


「んなとこ突っ立ってあぶねーだろ!道の端歩けよっ!」


そう怒鳴り散らされ、ビクつきながら道の端へと避けると、その横をバイクが通り過ぎて行く。



「バイク……」


小さな記憶のかけらが私の記憶を呼び起こす。




––––––『あんたが新(あらた)の妹?

へぇ。思ったより似てないね』




心許ない、細い細い糸。


全く関係ないかもしれない。


なんの手がかりにもならないかもしれない。



だけど、そんな細い糸だとしても、ほんの少しでもあなたに繋がっているのなら––––。