だったらあんたが堕ちてくれ


無意識に左の頬に手が伸びてしまう自分が情けない。

でもそれほどにあのビンタは強烈だった。

手加減とか戸惑いとか、そういったものは一切ない、本気のビンタ。

ガチビンタ。

「いいわねー。でもダメね、私にはビンタを食らわせる度胸ないもの」

「度胸……。コツはね、何も考えないこと。ビンタした後、何が起きようと気にしちゃだめ。仕事をクビになったとして死ぬわけじゃないし。人生なんとかなるもんだよ。私みたいに」

ワインを傾けながら二人はだめ人間談義に花を咲かせている。

「あはは。確かにそうね。ほらグラス空じゃない。まだ飲めるでしょう?」