威圧的な声と冷たい眼差しに一瞬ビビる。
足に力を込めて、なんとか声を絞り出す。
「いやいや、何?じゃなくて。帰ってくれませんか?」
我ながら情けない。
だけど仕方ないじゃないか。
その女の不気味さときたら、幽霊なんか比じゃない。
「え?」
俺がさっき発した声と全く同じ調子でその女が繰り返す。
「何?」
それに今度は俺が聞き返した。
「何って、声かけてきたのあんたでしょ」
「うわー、まじ?ナンパ?ねえナンパしたの?」
妹のこのテンションはなんなんだ?
いまはそんな冗談を言ってる場合じゃない、緊急事態だ。


