一緒にお風呂は丁重にお断りをして、貴也さんが入っている間にご飯の準備をすることにした。

 こはちゃんが先にお風呂へと言う貴也さんを先にお風呂に行かせるのは至難の技だった。
 それでも私が手料理を振る舞いたいんですと言ったら喜んでお風呂に行ってくれた。

 遅いので軽くでいいですと言い残して行った貴也さんにすぐに食べられそうなものを用意する。

 お風呂から出て来た貴也さんはバスローブかとドキドキしていたけれど、さすがにパジャマを着ていた。

「お風呂上がりはバスローブかと思ってました。」

「そうしたいのは山々ですが、さすがにあれは私も恥ずかしいです。」

 浅漬けの野菜をつまんで「おいしいです」と貴也さんは微笑んだ。
 そして続けてこう言った。

「結婚、堅苦しく考えないでください。
 といっても無理かもしれませんが。
 私は、こうして日常を日々一緒に過ごしたいと思っているだけです。」

 分かってる断る理由なんてない。

 ないんだけど、まだ『結婚』なんて現実味がなくて。
 最近、やっと好きだって気づいたばかりなのに。

「あの……明日は北海道にまた戻るんですよね?」

「……その件ですが、格好つけていました。
 もちろん今日はマンションに帰るつもりでしたし、必要なら明日は朝一で北海道に行くつもりでした。」

「3日の予定ですよね?」

「えぇ。3日の予定を1日で済ませて来られたのなら格好いいんですけど、実際のところ泣きついたんです。」

「泣きつくって……。」

 早く帰りたいって泣きついて帰れるわけない。
 貴也さんはどういう………。

「どうしても連れてきたい人がいるのですがと。
 そしたら全てを察してくれて今回は帰っていいと言われました。」

「私はまだ行くとは……。」

「分かっています。
 ただ1日も離れたくないです。
 そんなのわがままですね。」

 苦笑する貴也さんを笑うことはできなかった。

 私だって離れていたくないし、帰ってきてくれて嬉しかったのだから。