言われた通りベッドに舞い戻った2人はベッドに入って向かい合っていた。

「こは。」

 口だけ動かしたみたいに声にならない声で名前を呼ばれることがくすぐったい。

 たまに思い出したように頭を撫でたり、優しく頬に触れる手は温かかった。

 まどろんだ昼下がりは窓から入り込む木漏れ日が2人の顔にキラキラ当たっていた。

 その穏やかな時間はふいに発せられた貴也さんの思いつめたような声で破られた。
 こんなに近くにいるのにその声はどこか遠い声。

「何があっても一緒にいてくださいね。」

 たまに垣間見せる消えかけてしまいそうな不安げな貴也さんを捕まえるように貴也さんのシャツをつかんだ。

 その手をつかんで貴也さんは微笑んだ。

「そんな心もとない感じではなくて、もっとこうしてください。」

 つかんだ手を引かれそのまま引き寄せられて逃げ出せない距離にとらわれた。
 ずっとこの腕にとらわれていたかった。