無言の時間。
 トクトクと優しい心臓の音が聞こえる。

 まだドキドキするけれど、落ち着く貴也さんの腕の中。

 その中で子守唄みたいに優しい貴也さんの声がした。

「前にこはちゃんは私にとっての『モモ』だとお伝えしましたよね?
 本当にそうでした。
 何も予定がない週末がかけがえのない時間になっています。」

 『モモ』なんて恐れ多いけど……。

 私にとっても貴也さんは特別で……。

「私も貴也さんには思っている以上のことを言えるみたいです。
 私は言いたいことが言えない性格だとばかり思っていました。」

 私の背中を優しく大きな手が添えられる。
 安心する大きな優しい手。

「私にとってこはちゃんは空気くらい大切ですが、空気だけではない存在です。
 心落ち着く反面、心乱されるというか……。」

「え……。空気みたいだって………。」

「はい。
 でも空気とはキスをしたいとは思いません。
 それに……それ以上も。」

 な、何を……。

 貴也さんって思っていたよりちょっと意地悪なのかもしれない。
 だって今も恥ずかしくて困ってる私を見て楽しそうに微笑んでる。

「さぁ。冗談で済ませられるうちに朝食にしましょう。
 ほら。起きる時間です。」

 時計に視線を移す貴也さんに倣って時計を見る。

 時刻は正確にベッドを出る時間を指していた。
 15分後には確か朝食の時間だ。

「『モモ』といれば時間よりも大切なことが見つかるんじゃなかったんですか?」

 私だってちょっと意地悪なこと言っちゃうんだから。

 それなのに貴也さんは微笑んでいる。

「大丈夫です。
 朝食が終わればベッドに戻ってまだまだいちゃいちゃできますから。」

 笑顔の綺麗な顔が近づいてきて、唇に優しく触れた。

 到底太刀打ちできない甘さに赤面することしかできなかった。