「ベッドどうぞ。」

 促されてベッドにおずおずと入った。
 すぐ近くで寝転んだ宇佐美くんはベッドの下。

「え?あの……添い寝は?」

 私の質問に呆れた声が帰ってきて言葉のチョイスを間違えたと気づいても遅かった。

「本気で言ってます?
 佐々木課長にはあぁ言ったけど、俺、同じベッドで手を出さない約束できないですよ。」

「!!」

「これが普通の男の反応ですよ。
 中島さん、流されて男の部屋に泊まったりして危なっかしくて見てられないです。」

 う……。
 それを宇佐美くんが言わないでよ。

 私だって、佐々木課長とは初めは酔って成り行きな感じで、そうじゃなきゃ一緒に住んだり添い寝なんてしないと思う。

 佐々木課長とは段階を踏んだから。
 あまり褒められた成り行きじゃないけど。

 それに宇佐美くんには断れない理由があったから。

「佐々木課長とは止む得ない事情があって……。
 宇佐美くんとだって佐々木課長から言われなかったら、ここに来なかったと思うよ。」

「なんですか、それ。
 佐々木課長への当てつけかよ。
 うわー。ダッセー俺。」

「そ、そんなつもりは………。」

「でもさ。
 佐々木課長とは添い寝したんだよね?
 それで手出さないって佐々木課長、男としてどうなの?」

 う………。なんかそれって。

「……私に魅力がない。とも言わないかな?」

「ふっ。自虐的!
 俺、佐々木課長が何を考えてるか分からないです。」

「私も。」

「ハハッ。中島さんって面白いね。
 この日替わりの添い寝、またお願いしたいな。」

 日替わりの添い寝って、宇佐美くんとは添い寝してないんだけどね。
 強引かと思えば気遣ってくれて、やっぱり悪い人じゃないみたい。

「手……つなぎません?」

「え?」

「添い寝は無理なんで、手だけ貸してくれませんか?
 せっかく近くにいるのに寂しいです。」

 宇佐美くんも可愛いところあるんだなぁと思って微笑んで手を差し出した。

 差し出した手を思っていたよりも大きい手が優しく包んだ。
 優しい温もりに少しだけ鼓動が速くなる。

「添い寝が無理でも、ときめかせたいし。
 ってこんなんじゃドキドキしないかな。」

 そう言った宇佐美くんがつないだままの手の親指でそっと手の甲をなぞった。

 ドキンッと心臓が飛び跳ねると「チュッ」って音と柔らかな感触が手の甲に触れた。
 飛び跳ねた心臓がひっくり返りそうだ。

 ひゃーっという心の悲鳴とともに思わずひっこめた手をギュッと胸元で握る。

「い、今のは反則です。」

「ハハッ。中島さんってやっぱり可愛い。」

 大きな手が伸びてきて、頭に置かれた。
 包み込むように置かれたそれは子どもをなだめるように優しく撫でられた。

 ベッドの下で横向きになって頬杖をついた宇佐美くんが手を伸ばしている。

 宇佐美くんにまで子どもを扱いされるなんて。

 そう思いつつも心地いい温もりに、うとうとしてきて、まぶたが知らない間に下がっていった。