目を覚ますと隣には誰もいなかった。
確か佐々木課長と一緒に寝たはず……そう思いながら部屋を出る時に初めて気づいた。
扉に鍵がついていたのだ。
それも頑丈なやつ。
いつどんな場面でかけるんだろうと想像して背筋がゾッとする。
もしかして昨日も鍵をかけられてた!?
しかし鍵は内側からかけるタイプで回せば簡単に開けられそうだ。
ただ外側からコインなんかで回して開けられるタイプではない。
なんのために………。
彼女とかが来た時に部屋に入らせないようにするため?
そんな部屋に私は入って良かったのかな……。
見られちゃいけないものでもあるのかな?
ドキドキしながら見回してみても佐々木課長らしい無駄なものがないすっきりとした部屋。
真相は分からず、いろんな恐怖を感じつつ部屋を出た。
リビングには佐々木課長が既に起きていてコーヒーを飲んでいた。
後ろ姿でギクリとしたのが分かった。
起きてきちゃダメだったのかな……。
そうだよね。忘れてた。
今は酔っていない佐々木課長だ。
「おはようございます………。
あの……昨日からお世話になっています。
ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
「………別に忘れているわけではありません。
住まわせたのは自分だということは分かっています。
ただ、しらふでは対応に困るのですが、朝から酒を飲むような堕落した人間などに…。」
佐々木課長の話を緊張気味に聞く心春の耳に届くのは、いつも通り堅い話ぶり。
それでもいつもとは違っていた。
佐々木課長が迷っている。
しらふでは困るけど、飲むのはちょっと……なんて。
迷うことは時間の無駄だって言いそうな佐々木課長が………。
視界の中の佐々木課長が髪に手をやるとクシャッとさせてため息をついた。
酔ってても酔ってなくても佐々木課長は佐々木課長なんだ。
困ると髪をクシャッとする癖が同じだった。
でも………。
やっぱり柔らかさが全然違うから別人に感じるし、緊張感が半端ない。