特別な君のために


一曲歌い終わり、なるみが気になる箇所を修正していく。

「ここの歌詞は無声音をもっと綺麗にね」

「ここ、音が上がりきってないよ。意識して上げて!」

「ここは私達、脇役パートになるんだから、主張しすぎないでね」

なるみの指示は、同い年とは思えないほど的確だ。

女子ばかりのパート練習でも、不平不満が出ないのは、なるみがしっかりしているからだと思う。

「美冬、アルト歌って。みんなは美冬につられないで音を取ってね」

「はい」

私はよく、こうして一人だけアルトのパートを歌わされる。時には男声パートも歌う。

いわゆるハモりパートを歌うのは得意だ。

絶対につられない自信もある。自分の頭の中にある音を拾っていけば、外れることはないから。

……自分の頭の中にある音を拾う?

千春がコマーシャルやアニメを完璧に再現するのも、私と同じなのかも知れない。

千春の頭の中には私よりもっと多くの映像や音が詰まっていて、それを私よりスムーズに出せるのかも。

なぁんだ、私も千春と同じだ。むしろ千春の方がすごい技をもっているんだ。

そんなことを考えているうちに、なるみがキーボードで最初の音を鳴らし始めた。

練習に集中しなくては。