やっぱり、カミングアウトしなければよかったかも知れない。
私の身体には、他にも妹の爪痕がある。
顔にこの傷をつけられてしまった時、珍しくお父さんが激しく千春を叱っていたのを思い出す。
『美冬をこれ以上傷つけるな!』
……あれから十年経った今も、傷ついてボロボロな私。
成長していないなと自嘲気味に笑った時、こめかみの古傷に、ぽふぽふと柔らかいものが当たった。
カエルの衛生兵の手、だった。
「美冬二等兵、名誉の負傷が他にもいっぱいあるんだろ。いろんな痛みに耐えてきたんだな。だけど痛みの多い人生って、その分痛くない時に感じられる幸せも大きいよ」
それから、小さな声で。
「痛いの痛いの、とんでいけ~」
カエルの衛生兵が私の古傷をぽいっとバスの窓へ放り出してくれた。
そのしぐさがあまりにもかわいらしくて、思わず本気で笑ってしまった。
憧れだった先輩からも、憐みの目で見られている。
最初はそう思っていたけれど、もしかしたら違うのかも知れない。
憐みではなく、痛みに寄り添うといった姿勢で私に接してくれようとしている。
奏多先輩はやっぱりすごいと思った。



