そう呟かれてから、少し間を置いて問われた。
「ここ、どうしたの?」
奏多先輩が指で軽く私のこめかみを触った。
かすかに残る指の感触に一瞬驚いたけれど、不快だとは全く感じなかった。
だから私は素直に答える。
「ここも妹に爪で引っかかれたんです。小学校三年生の時でした。まだ目立ちますか?」
髪をおろしていたら、見えない位置にある古傷だった。
今は髪を耳にかけていたから、至近距離だと見えてしまう。
はたから見て気になるほど、傷跡が残っていたのだろうか。
「いや、言われなきゃわかんない程度。ただ、さっきの話を聞いて、もしかしたらって思っただけ。ごめん変なこと言って。気にしないで」
「大丈夫ですよ! 先輩も気にしないでくださいね」
口では大丈夫と言いつつ、こめかみの傷をそっと撫でてみた。
指先でもかすかにわかる凹凸が、存在を主張している。
ああ、やっぱり同情されているのかな、と思ったらまた心がズキズキ痛みだした。
こっそり奏多先輩を見たら、先輩も私を見ていて目が合ってしまった。
気まずそうに、少し顔を赤くしているように見えた。
それから、目線をふいと外された。



