特別な君のために


奏多先輩とふたりで、バスに乗り込んだ。

祝日の昼間ということもあり、バスは空いていたので並んで座ることになった。

普段、男子とバスに並んで座る、などということがほとんどない私は、ガラスに映る自分と奏多先輩の顔を見て、動悸が激しくなる。

落ち着け私。

奏多先輩は単に部活をサボった私のことをほっとけなくて構ってくれているだけ。

何しろ、自分が勧誘した後輩だから。

私にとっては、部活も、勉強面も、人柄も、すごい先輩だと思っているけれど、奏多先輩にとっては、単なる後輩のひとり。

奏多先輩がまだ高校生の頃だって、あまり話したこともなかった。

五十人以上いる部活の仲間のひとり。

しかも合唱部は女子が多い。男子は毎年十人程度をかき集めるのがやっと。

そんなことをぼんやり考えていたら、先輩からじっと見つめられていたことにようやく気付いた。