「それじゃあ逆に聞くけど、美冬の両親は、俺と付き合った場合、何て言うと思う?」

「……お母さんはちょっと心配しますね。でも、うちも妹のことがあるからっていう理由で、ちゃんと納得してくれると思います。お父さんの方がきっとスムーズに理解してくれるんじゃないかな……」

「そっか。それ聞いてちょっと安心。それじゃあ、待ってるよ」

「え? 何を?」

「美冬がこの大学に合格することを。それからあとは、自分で考えて」

「……合格して、入学して、サークルに入って、一緒に歌って……楽しそうですね!」


……ここまで言っても、まだ気が付かないのはどうしてだろう。もしかしたらわざとか?


「ダメだこいつ。勉強の偏差値しか上がっていないのか!? いや、さっきはなかなかスリリングな女の闘いも見せてくれたっていうのに……」


……もうちょっと、ストレートに言わないと伝わらない奴なのか。あんなに色々考えて行動できるのに不思議だ。


「美冬はどうでもいい男と、手を繋いでも平気なのか?」

「はい?」

「俺に手を繋がれて、嫌じゃなかったか?」

「嫌じゃないですよ。あ、でも私、緊張すると手汗が凄いので、そういうときはちょっと……で、何でそんなことを聞くんですか?」

「……もういい。受験勉強に集中できなくなっても困るし」


入学してきたら、時間はたっぷりある。今は焦らず、美冬のペースを守っていこう。

俺もいつか、美冬のこと、美冬の環境を包み込めるようになるため、もっと勉強しなくては——。



【奏多の独白 了】