練習を見て、そろそろ帰ろうという時。
美冬の方をみると、まだ下級生やなるみと話しているのがわかった。
そろそろなるみとの会話も終わりかな、というところで近づいてみると……。
「ところで美冬、なんで奏多先輩と一緒に来たの?」
……さすがなるみ。どうする美冬?
「街で偶然会ったんだ」
まあそれは嘘ではないな。駅前のネットカフェも街中であることに間違いないのだから。
「ふうん。で、何か話したの?」
「うん。妹のこと」
「私には今まで内緒にしてたのに、奏多先輩には打ち明けるんだ~。それってもしかして……」
ニヤニヤして肘でつつかれている。さあ、どう答えるのか?
「そんなんじゃないって! 奏多先輩は福祉が専攻だから。別に好きとか関係なく話を聞いてもらったの!」
俺が後ろにいて、その会話を聞いていたせいか、それまでざわざわしていた周囲の会話が、一瞬静まり返った。
そして笑って言った。
「そっか、俺、美冬の恋愛対象外なんだな」
……こう言うしかないだろ、この場合。



