美冬はそれから、妹のことを色々話してくれた。
会ったことはないけれど、俺もその妹がどんな子であるのか、どれだけ周囲から可愛がられているのか、よくわかった。
部活をサボろうとしていた美冬を奮い立たせ、一緒にたこ焼きを食べたあたりから感じたことがあった。
……俺、今、楽しいかも。
この子といると、落ち着く。
それが決定的になったのは、バスに乗った時だった。
バスの中では隣同士の座席になり、座って話すことができた。
美冬の横顔を見ていたら、ある一点が気になった。
こめかみに、凹み傷がある。
かなり古い傷のようだけれど、これももしかしたら……。
最初は傷を見ていたはずだった。
だけどそのうちに、美冬の顔全体を見て、可愛いなと思っているうちに、本人に気づかれた。
あまりにも気まずかったから、衛生兵を持ち出して、柄にもなく
「痛いの痛いの、とんでいけー」
なんて、やってしまった。



