特別な君のために


「ひとりにバレてしまったら、みんなにバレたのと一緒です。今まで秘密にしてたのに、また……」

「俺にバレちゃった?」


思いっきり首を縦に振る美冬の髪の毛が、とてもサラサラで綺麗だな、と思った。


「知られたくないことって、誰にでもあると思うんですけど、例えば家が貧乏だとか、お兄ちゃんがニートだとか、お父さんの背中にドラゴンのイラストが載ってるとか」

「……イラストって、刺青のこと?」

「そうです。ちょっとソフトに表現してみました」

美冬は割と優等生で、俺と違ってボキャブラリーも豊富だ。だからこんな周りくどい話になるのだろうか。

「別にそこは配慮の必要ないんじゃない?」

「いえ、念のため。奏多先輩のお父さんの背中にもしドラゴンが浮かんでたら、私は色んな意味でヤバいかもっていう配慮です」

……全く、我が家でヤバいのは、父さんじゃないぞ。実は母さんがマジでヤバいから俺が今ここにいる訳だけど、その話をすると美冬の話が聞けなくなる。

俺は目の前にいたカエルの隊長をひょいと取り上げた。そして。

「いろいろ先回りして予防線張りながら進んでいくんだな……隊長、もっとサクサク進めるように命令してやって。『美冬二等兵、突撃ー!』だってさ」

カエルの隊長を操作しながら、笑ってしまう。

「ちょっ、何で私が二等兵なんですか。しかも私、傷病兵ですから」