個室で一晩過ごして、シャワールームで汗を流した。
まだ部活訪問まで時間があるから、もう一度個室に戻ってゲームでもしようかと思っていたら。
クレーンゲームに夢中になっている女の子の姿があった。
適当としか思えない操作で、カエルの兵隊を取ろうとしている。
慣れていないのが、バレバレだった。
へたくそだな、どんな奴だ、と近くに行って驚いた。
美冬だった。
最後に会ったのは、去年の夏、部活を見に行った時。それ以来だ。
短いスカートに、白いカーディガンを羽織って、リュックを背負っている。
どうやら小銭がなくなったらしく、財布の中身と相談しているようだ。
ちょっと驚かしてやろうと、両替機の前でたたずむ美冬の肩を叩いた。
「あ、すみません」
お先にどうぞと譲るつもりだったのだろうか。
振り返った美冬の眼が俺を見上げて、まん丸になった。
「美冬、だよな。部活はどうした?」
「えええっ! 奏多先輩!?」
その驚き方から考えて、部活をサボっていたことが丸わかりだった。



