入学してから二年目のある日、サークルの飲み会でちょっと飲み過ぎたことがあった。
由香さんが見かねて俺を家まで送り届けてくれたけれど、俺にはほとんど記憶がない。
その、記憶がない時にやってしまったらしい。
物心ついた時から、うつ状態の母親に『お前なんか産まなきゃ良かった』『死ね』と言われ続けてきたこと。
甘えたくて身を寄せると、すぐに俺から離れてしまったこと。
バレたら困るからと、顔ではなく背中や尻を叩かれていたこと。
高三の時、うっかり隠し忘れたアイスピックで、眉間を刺されそうになったこと……。
全部吐いたらしい。
酒と一緒に。
驚いた彼女は、ご両親にそのことを話してしまったそうだ。
そして、厳格なご両親は、俺との交際を猛反対した。
付き合った期間、ほんの数か月。
彼女には色々助けてもらったし、教えてもらったし、感謝しているけれど、やっぱり親子の縁を切られると聞いたら、俺が別れるしかないと思った。



