今では笑い話にできるけれど、出産前は何から何まで怖かった。

ただでさえ不安が多い初めての出産なのに、双子で帝王切開。

いつも頭から離れない、我が子に障がいがあったらどうしよう、奏多さんに迷惑をかけてしまうという底知れない不安。

お義母さんのように、出産をきっかけとして、精神的に不安定になる可能性だってある。



予定帝王切開の前日の夜。

意を決して奏多さんに打ち明けた。


「この出産で、私は変わるかも知れないって思うの。今はとにかく怖くて逃げだしたい気分……」

「うん。わかるよ」

「それじゃあ、どんな私でも、受け入れてくれますか?」

すると、奏多さんは一瞬驚いたような顔をして、それから私のお腹にそっと手を置いた。

「もちろん。どんな君でも、どんな子ども達でも、それが俺の特別な家族だから」


特別、という言葉に、はっとした。

我が家ではいつだって『特別』に目をかけてもらっていたのは、千春だった。

それは仕方がないことだっていうのは、頭ではわかっていた。

だけど、小さい頃は満たされない気持ちを常に抱えていたから。