先に到着したのは、千春と奏多先輩だった。
玄関から入ってきた千春に、私はぎゅっと抱きついた。
「ごめんね千春。お姉ちゃんが悪かったよ」
千春は、ぽかんとしている。でもいい。
「俺には、してくれないの?」
鼻とほっぺを赤くした奏多先輩が、ニヤニヤして言った。
「奏多先輩、すみませんでした。それと、ありがとうございましたっ!」
私の精一杯の力をこめて、握手をした。
「これで許してください」
「まあ、いいかな。ハグの真っ最中にお母さんが帰ってきても困るし」
……先輩、ここには千春もいるんですけれど。
少しして、お母さんも戻ってきたので、見つかった状況を説明しながら、奏多先輩の紹介をした。
「まあ、合唱のOBって、この方だったのね。なるほど~」
お母さんが意味ありげにニコニコしている。
「それじゃあ、千春をお風呂に入れなくちゃならないから、あなた達は二階へ行っててね。奏多君、どうぞごゆっくり」



