「それで、千春ちゃんが行きそうな場所に心当たりは?」

そう言われて、しばし考え込む。

千春を連れて、近所を散歩することはほとんどない。

大抵、車でどこかへ連れて行くことの方が多いから。

でも、強いて挙げるとすれば……。


「スーパー、かな。あと、家の近所の自販機も好きだったんです。それから、ドラッグストアの前にあるガチャガチャもお気に入りでした。あとは……わかりません」

「それだけ聞けば、あとは何とか探してみるよ。美冬は自宅で妹が戻ってくるのを待ってた方がいい」

「嫌です! 私も行きます。元はといえば、私が鍵をかけ忘れたせいなんだから……」

「いいから。誰かが家に残らないと、もし帰ってきてもまた出て行くかも知れないぞ。それに、明日センターだろ。風邪でもひいたらどうする?」

「だって、私がいけないのに……」

「俺が急に呼び出したせいだろ。だから、俺が美冬の代わりに探しに行くから」

「でも……」

「頼むから、言うことを聞いてくれ。ここで美冬が無茶しても、誰も幸せにならない。だから、落ち着いて、玄関の中で待ってた方がいい。さ、早く」

私を玄関に残して、奏多先輩は走って行ってしまった。