そのままいつものように自動ドアを潜り社長室へと入っていくと思いきや、自動ドアの前で足を止め振り向く事もないまま。


「榛原、話がある。来てくれ」


そう言って自動ドアを潜っていった。

いきなり呼ばれた私は驚いて向かいのデスクにいる阿室さんに視線を向けた。

大丈夫？という目をしている阿室さんに、大丈夫じゃないかもしれませんという表情をすれば。


「一緒に着いていこうか？」


小さな声で返ってきた。

出来るなら着いてきてほしい。

けれど…


「大丈夫、です。一人で行ってきます」


私の声は微かに震えていた。

でもちゃんと言葉を伝えられた。

大丈夫と言い聞かせるように私は縺れそうな足を動かして社長室へと入っていく。


「……っ」


ビックリした。

こんなにも近くに社長室入ってすぐの所に立っているなんて思いもしていなかったから。