もうすぐでお昼休みに入る時間に秘書室に入ってきた私にお疲れ様と言うだけで誰もそれ以上は何も言わなかった。

それは田神室長が別室で仕事をしていると伝えてくれたお陰かもしれない。

それでもこの中で一番新人の私が別室でだなんて有り得ない事実にも突っ込まず、仕事を回してくれたのは流石だと思った。


「あら、今日も美味しそうね」


デスクに手作り弁当を広げた私にそう声をかけてきたのは向かいのデスクに座る阿室さん。

阿室さんは私に新人指導をしてくれた内勤務リーダーのような存在で、確か田神社長と同い年の先輩だ。


「今日はお弁当ですか?」

「ええ。味気ない598円のコンビニ弁当だけどね」


割り箸を割っていただきますと言った阿室さん。

基本的にここでしか食べない私に対し阿室さんは勿論の事、秘書室の人達は休憩に入ると楽しそうに社員食堂や外によく食べに行く。