「あの時、田神社長が私に好意を抱いてはいないと仰ったのは」


何だったんですか?

田神室長のさっきの言葉や田神社長が今言った言葉に、今までろくな恋愛をしてこなかった私でも何となく分かる。

けれど田神社長には自惚れるなと言ってほしい。


「そんなもの忘れろ」


勘違いするなと言ってほしい。

渇をいれてほしい。

出なければ私は田神社長の事を、


「榛原に好意を抱いてる。そう覚えろ」


ーー恐怖として見てしまう。

田神社長の事を。

私は仕事に戻ります!とその場から逃げ出すように、扉の前で立ち尽くす田神社長の横をすり抜けた。