「すみません。朝から迷惑ばかりかけてしまって。送っていただいた上にこんな…」

「榛原さんは謝らないで下さい。榛原さんは何一つ悪くなく、悪いのは社長ですし。そんな社長と榛原さんを二人きりにした私も然り」

「そんな…」

「どのような状況だったかも把握しております」


田神社長にエレベーター内で抱き寄せられた事を室長は知っている…?

恥ずかしくなり視線を落とす。


「あれから社長にはきつく叱っておきました。部下として従兄弟として」

「叱るだなんて」

「甘くするから付け上がるのです。全く職場のエレベーターで何をしているのか。社長という立場上一番してはいけない人だと理解しているはずだとばかり」


ふぅと息を吐き出した田神室長は厳しい顔を浮かべていて、普段の柔らかさは何も感じない。

その顔はますます田神社長に似ている。


「それで、榛原さん」

「はい」