「中広くてとても綺麗ですね。新しい車なんですか?私車に詳しくないので外車という事くらいしか」

「数年前の車だな」

「田神社長は綺麗好きなんですね」


……田神社長は普段自分で運転するのはツーシートの外車で、今日は私に気を使って後部座席がある車をわざわざ選んだ田神社長の優しいさをこの時の私はまだ知らない。


「行くか」

「どこに行くんですか?」

「適当に走らせる」


……なんて言いながらも出掛ける事が決まってから、彼女が喜ぶドライブデートと検索して旅のしおりならぬものを夜な夜な作っていた田神社長の可愛らしさをこの時の私はまだ知らない。


「素敵な私服ですね」

「普段着だ」


……私と同様にわざわざ新調した服だという事をこの時私はまだ知らない。


「榛原、今日はありがとう」

「こちらこそ貴重な田神社長のお休みを私に使ってくれてありがとうございます」