「あの人の母親ってパパとママの同級生なんだって」

「うん。幼稚園から同じって言ってたよね」


名前は出さないけれど、あの人というのは奈穂実のこと。
話に聞き耳をたてているクラスメイト達の様子に、麻梨と由梨は誰も知らない情報を持っているという優越感に浸ったような顔になった。

けれど奈穂実は聞こえないふりをして、けれど呆れたような、そして、あきらめたような大きなため息をはきながら教科書をカバンから出して机の中にしまっていた。


「それで、うちのパパのことすっごい好きだったらしいじゃん」

「『しつこ過ぎて困った』ってパパとママが笑ってたよね」


そこで奈穂実の手が止まった。