「こんなものっ! 」


勢いにまかせて床に叩きつけた実宇子はわたしをますます睨んできたけれど。

せっかくのわたしの優しさを捨てるつもりなの?


「少し冷静になってよ。これがないと奈穂実の頭を取り戻せないよ? 」


わたしの言葉に息を飲んだ実宇子は、奈穂実に目をやった。


「……母さん、私、死ぬの? 」


実宇子の腕にしがみついている奈穂実は、絶望に包まれている。


「奈穂実、……殺させるもんですかっ」


実宇子はそう言ったけれど。
これから起こる変えようのない未来と娘の不安を拒むように大きく首を振るうと、震える手でてるてる坊主を拾った。