サーッと雨の音が聞こえてきた。
また雨が降り始めたみたいだけれど、大雨とは違ってやわらかく降る繊細な雨の音。
割れた窓ガラスの外に目を向けると、レースのカーテンをひいたような美しい霧雨が辺りを包んでいた。


奈穂実と実宇子もその景色を何も言わずに見ていた。
けれど少しして二人は顔を合わせると“気のせい”と思いたそうに耳をすませた。

でも気のせいじゃなかったみたい。

だんだんと近づいてくる足音に、二人の表情が面白いように恐怖に歪みながら青ざめていく。


「あーあバレちゃった。ねぇ、逃げなくていいの? 」


わたしはもう一度涙をふくと、笑いを堪える事ができずにふふっと吹き出してしまった。