奈穂実が投げたイスは窓ガラスに当たり、大きな音をたてて外へと突き抜けて行った。


「ああぁーーーーっ! 」


ガシャンッ、パリンッと地面に落ちて砕け散るガラスの音と、断末魔のような潤子の叫び声が聞こえたのは、ほとんど同時だった。

奈穂実は息を飲むとその大きな目が飛び出しそうなくらいに見開いて、窓から身を乗り出して外の様子を確認した。


そこには落ちてきたガラスによって切断されたと思われるほのかの頭と、てるてる坊主をしっかりと握りしめている体が転がっていた。


「うそ……、私、私……」

「あーあ、やっちゃったねー」


震える奈穂実を追い詰めるように、わたしは明るくたずねてみた。