「母さん、大丈夫だよ」


怯える実宇子から手を離した奈穂実は立ち上がってわたしに対面した。

怒っているのがヒシヒシと刺さるように伝わってくる。
本気で母親を守るつもりみたい。


「美晴、それを返して。もう使わせるわけにはいかない」

「えー、いやだよ」

「じゃあ奪い返すだけよっ」


そう言って奈穂実は側にあったイスを担ぎ上げると、威嚇することもなく思いきりわたしに投げつけてきた。