窓から入り込んだわたしたちは靴も脱がずに教室へと急いだ。

わたしの前を走る奈穂実の足音が廊下に響き渡っている。
きっとこの音はほのかにも聞こえているはず。

外から見えたほどに真っ暗闇な廊下ではなかったけれど、非常灯の緑の光や非常ベルの赤いランプが暗闇よりも不気味さをかもし出していた。

けれど怖がっている時間なんてない。
ほのかが“顔”を描く前になんとしてでも止めないと。


早く、早く、早く……


そう思えば思うほど焦ってしまうし、濡れたスカートが行く手をはばむように足に張り付いてきて、うっとおしてくて仕方がない。