「……見に行ったらダメだよ」

「えー、きっとすぐ近くにいるよ? 行こうよ」

「絶対にダメ」


わたしの質問に奈穂実はガックリと肩を落とした。
そして機嫌を取ってくる犬みたいに上目遣いで訴えてきたけれど、わたしはゆっくりと首をふって譲らなかった。


「美晴、気分はどう? 」


諦めてくれたような奈穂実は、スマホを取り出すとメッセージを確認しながら尋ねてきた。


「うん、すごく楽になったよ。じゃあ帰ろっか」

「母さんが車で迎えに来てくれるから、一緒に帰ろうよ」

「え? ……わたし大丈夫だよ。近いから一人で帰れるし」

送ってもらうなんて考えてもいなかったから、気がひけてしまう。

わたしは両手を振って全力で断った。