「……ううん大丈夫。少し気持ち悪いだけ。雨のせいかも」

「無理しないでロビーに出ておく? 」


わたしはハンカチで口元をおさえながら首をふって、祭壇に目を向けた。

真っ白い花に飾られた祭壇には由梨と麻梨、二人が仲良く笑っている遺影が飾ってあり、その前には、花に埋もれるように白い棺桶が二つ並んでいる。

そこに力なく、けれどしがみつくように由梨と麻梨の名前を呼びながら泣いている喪服姿の女の人が、双子の母親の多華江。
喪服の着物もセットしてある髪も乱れ、化粧は涙で落ちていた。
突然に二人の子供を失ってしまったのだから、無理もないと思う。

その横で3人を見守るように気丈に立っているのは、父親の翔平だった。