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 いつもだったら無視していた。


 いつもだったら、すぐにCD探しに夢中になっていた。



 でも気がつけば、何かに背中を押されるように駆け出して彼の手を引っ張っていた。


 そんな行動にびっくりしたのは、もちろん理久だけじゃない。
 あたしも驚いて、恥ずかしくなって、すぐに手を引っ込めた。



「え、えっと……」

「美音? 雨に濡れるよ」

「告白されたからとかじゃないから。ただ……」



 あたしは一度、深呼吸する。
 初めて、心を動かされた。初めて……。



「また会いたい」

「え?」

「あなたの好きな音楽、知りたい」