小さなCDショップ内に、客はあたしたち二人だけ。


 若いアルバイトらしき店員はレジで暇そうにスマホを触っている。
 話を聞かれているような気がして、お互いに急に気まずくなる。


 弾かれたように離れ、後ろを向いた。


 変な人だと思えば思うほどに、理久のことが気になる。


 ただCDを見に来ただけだったが、理久の存在がいつもと変わらない寄り道を変えてしまう。



「……帰る」



 気になる。理久のことが、気になる。
 恋を知っていると言わんばかりの彼が。


 でも、それを言えるほどあたしは素直じゃない。


 まるでその場から逃げ出すように出口を目指して歩き出した。