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「ねえ、聞いてる?」



 おでこをつつかれて、あたしは我に返る。
 あの時と変わらない人が目の前で笑う。



「いきなりなに?」



 あの日に出会い、今日が二回目。
 二回と言っても、彼は雨の日のことを覚えていない。


 今日のことも、たまたま寄ったCDショップに居合わせただけの存在。すぐに忘れてしまうかもしれない。



「だから、こういったラブソングに共感出来ないのってさ。理由があるんだよ」

「理由?」

「お前さ、恋したことないだろ」

「は!?」



 腹が立った。
 お互いのことを知りもしない関係で、そこまで言われるとは思わなかったから。