今の世の中、どんなに必死に隠そうとしてもすぐにバレてしまう。

そもそも、あたしが鳳皇の鳳凰妃だってことはすでに知られているから、“東條凛音”が“リン”だと結びつけるのは容易い。


それでも十夜はあたしの名前ではなく“鳳皇総長リン”と描いてくれた。

少しでもあたしを外敵から護るために。




紙袋を膝の上に置いて、そっと十夜の手を握りにいく。

十夜はそれにすぐ気づいて握り返してくれた。


「どうした」


視線が合った瞬間、胸がほわっと温かい気持ちに満たされた。


この瞬間がすごく好き。

あたしを見つめる優しい瞳も、握り返してくれる大きな手も。

全部全部温かくて大好き。



「ちょっと触りたくなっちゃって」

「なんだそれ」


ふっと零れた笑みにまた胸が温かくなって、あたしの頬も自然と綻ぶ。