私はどこにでもいるいわゆる普通の女子高生だ。
これといった長所がある訳でもなく、平凡な日常をだらだらと過ごしている。
そんなつまらない日々の中に突然現れたのが、あなただった。

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窓際の一番後ろ。
いつものように空を見上げながら先生の話を聞き流していた。
外を見ているのは飽きない。
体育の授業を受けている生徒。
コロコロと表情を変えていく空。
カサカサと音をたてながら揺れる木々の葉。
私が通う学校のある街。
このいつもと変わらない景色を眺めるのが、私は好きだった。
何かがある訳でもないけどただぼーっといつまでも眺めている。
それもなんとなく、だ。
「椎華。何入る?」
突然話しかけられ、現実の世界に引き戻された感じだ。
「入るって何に?」
私は周りのことを気にしたことがない。
もちろん話だって全然聞いていなかった。
だって外を見ていたのだから。
その方が心が落ち着くしね。
「はぁ…。また聞いてなかったの?」
呆れたように言うけど、嫌そうな感じは全くない。
私が唯一『友達』だと思っている子だ。
「ごめんごめん。つい…ね。で、なんだっけ?」
「まったくもう。少しは自分で聞いてなさいよね。委員会の事だよ。」
委員会・・・。
どうしよ。忘れてた。
「雨音は何に入るの?」
私の友達、古瀬雨音は可愛くて何でも出来て一言で言えば、モテる。
私の自慢の友達だ。
「そうだなぁ。学級委員かな。」
「あーやっぱりか。どーしよっかな。」
確か雨音は中学の頃からそういうのが得意だった。
私、みんなの前に立って何か言うのって苦手だしな。
それにそんな目立つような委員会にはなるべく入りたくない。
「まあどうせ図書委員でしょ?」
そうだ。
私は本が大好きだ。中学の頃からずっと図書委員会に入っている。
だから今年も入ろうかなと思っていた。
「まあね。」
図書委員を決める時に手を挙げ、自分の名前が黒板に書かれるのを横目で見ながら、また外を眺める。
別にクラスの男子が誰だとかは特に気にしてないし、正直に言うとどうでもよかった。
誰がなろうと私は自分の仕事をするだけだ。
正直、クラスの人とあまり関わりを持ちたくなかった。
雨音だけで充分だ。

「…ぃか。椎華、起きて。」
「ん?雨音?」
色々な事を考えながら外を見ているうちに、いつの間にか放課後になっていた。
「これから委員会だよ。」
あ、そっか。委員会、決まったんだ。
「ありがと。一緒に帰れる?」
「うん。先に終わったら下駄箱で待ってるね。」
雨音と別れてから委員会の場所に行くと、ほとんどの人がもう既に座って待っていた。
私も空いている席を探す。
あ、あった。ラッキー。
窓際の1番後ろの席が丁度空いている。
安定の場所に座ると、また外を眺めながら待つ。
いつもと少し違った景色をいつものようにぼーっと眺めていた。
このまま終わんないかな、なんてね。
やっぱ運動部って楽しそうだな。
独りで色々考えていたその時。
「よろしくお願いします。」
いきなり声をかけられてびっくりしたのと同時に、『誰だ』と思ったのが内心だった。
「僕も図書委員なんです。あなたと同じクラスなんですけど、わかりませんか?」
えーっと。こんな人いたっけ?
「ごめんなさい。あんまり周りに興味がなくて・・・。」
「大丈夫ですよ。僕は東雲翔吾です。あなたは?」
「えっと、佐伯椎華って言うの。」