姫様と魔法のキス



次の日、昨日よりも早い時間に城を抜け出し森へと向かう。

いつもの定位置よりも奥の方へと進めば、動物たちに囲まれ、漆黒に身を包んだ青年がそこにいた。


「レゼ!」


どこで何時に会うという約束していなかったため少し不安だったニカは、レゼの姿を見て喜んで駆け寄る。

そんなニカの姿を確認したレゼは、前回とは違いその場から逃げ出すことはなかったが、やはりニカの興奮具合に軽く動揺していた。


「約束したのに細かいことを決めていなかったから、どうしようと思っていたの。また会えて嬉しいわ!」

「(また追いかけられるのは嫌だったし…)」


ニコニコと笑いながら駆け寄って来たニカに、レゼは密かに心の中で呟く。

ニカはレゼの隣へと座ると、レゼの周りにいる動物たちに目を輝かせた。


「レゼは動物とお話出来るのよね!それがレゼの魔法?」

「……うん」

「素敵!動物とお話出来るだなんて、とっても羨ましいわ!」


レゼの周りにいた子ギツネに手を伸ばすと、鼻をヒクつかせて匂いを嗅がれる。

ある程度匂いをかいで安心したのか近寄って来た子ギツネをニカはギュッと抱きしめた。