覚悟が必要だと気付いたニカは、ふと視線を感じてレゼを見る。
こちらを見ていたレゼはさっと腕を伸ばすとニカの唇を親指でごしごしと擦った。
「っ!?レゼ!?」
「…ソースついてたから」
表情を変えずに返したレゼに、ニカは1人赤くなった頰をごまかそうと慌てていた。
「レゼ!!今日は本当に来てくれてありがとね!ちょっと休む?」
「……休める部屋とかある?」
「さっき着替えた部屋使ってもらって大丈夫だけど、誰か人をつけようか?」
「いや、1人で大丈夫だから」
ありがとう、とお礼を返してレゼは会場の外へと出ていき、その背中を赤くなった頰を両の手で押さえながらニカは見送る。
扉が閉まり、喧騒とした声が静まり返ったと同時にレゼは覚悟を決めたように歩みを進めた。
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