「ねぇ」
レゼに声をかけられ、ニカはハッと意識を戻す。
「あっ、ごめんなさい。ぼーっとしてたみたい」
慌てて手に持っていたホットサンドを口に運ぶが、不審に思ったのかレゼは眉間に皺を寄せニカのことを見た。
「何かあったんじゃないの?」
「え、そんなことは…」
「話ぐらいなら聞くけど」
もはや定位置となりつつある膝の上にいる子ギツネを撫でながら、レゼはニカに告げる。
その距離感に安心したニカは、意を決してレゼのことを見た。
「あのね、レゼ。今まで黙っていたんだけれど、私実はこの国のお姫様なの」
「うん、そうだね」
あっけらかんと答えたレゼに、ニカは目を丸くする。
何故知っているのかと言わんばかりのその顔に、レゼは淡々と答えた。
「動物たちが言ってた」
レゼが腕を上にあげれば、2羽の小鳥がその指に止まる。
その小鳥たちはニカがよく城の窓から見る小鳥と同じ種類で、心底納得してしまった。
「あなたたちに見られていたのね」
ニカも手を伸ばせば、レゼが誘導するようにニカの指に小鳥を乗せる。
首を左右に傾げてこちらを見る小鳥たちが何を言っているかは、やはりニカには分からなかった。
「それを言うのに迷ってた訳じゃないよね」
レゼが話の筋を戻したことで、ニカも小鳥を空に放ちレゼの顔を見た。
「今度、結婚するかもしれないの。結婚自体は姫に生まれた時点で仕方のないことだとは思っていたのだけれど、相手が…その…」
「気に入らないんだ?」
「そう…なのかな」
ニカ自身もハッキリとは分かっていないが、気に入らないとは少し違うような、なんとも言えない気持ちだった。
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