「ニカ様〜!!ニカ様はどこじゃ〜〜」


ブラウの声が城中に響く中、城の裏側にある大きな木の下にニカはいた。

木の幹にある小さな凸に足をかけ、手で丈夫な枝を掴んではまた上へ上へと進んでいく。

頂上付近に差し掛かったところでこれまた丈夫な枝の上へと降り立ったニカは、そのまま枝を歩き、先にある城壁を飛び越えるように跳んだ。

勢いをつけたことで葉は揺れ、ニカは城壁を超える。そして、下にある屋台の屋根へとダイブした。




ニカのいるアジーン王国は、緑豊かな自然溢れる国だ。

町には至る所に綺麗な水が流れ、新緑が風を受けて音を鳴らし、動物たちが自然の中で生きている。

自然の恵みである果物や魚が並ぶ町の屋台を横目で見ながら、ニカはいつも通り秘密の場所へと向かっていた。



「ん〜〜!!やっぱりここが1番おちつく!」



緑が生い茂る地面に寝転び、緑の隙間から見える青空を見ながら深呼吸をする。

そうして目を瞑り、風による木々のざわめきに耳を澄ました。