「失礼します。ニカでこざいます」


ノックをすれば、中からドアがゆっくりと開く。

シャンデリアに照らされ、長机のある席に座っている人たちの中に、なんとなく見覚えのある人が1人座っていた。


「ニカ様、大変お久しぶりでございます。この間拝見した時と比べて、ますますお美しくなって、正直見惚れてしまいました」


椅子から立ち上がり、こちらを向いてお辞儀をするアロガンに、ニカも対応する。


「こちらこそ、逞しくなられていて目を奪われてしまいましたわ。遠路遥々ようこそいらしてくださいました」


ドレスの裾を持ち上げ、軽く一礼をすると、父王座る席の隣へと腰を下ろした。


「我がドヴァー国と貴殿のアジーン王国との友好的な交流と発展を願いましょう。
この末弟であるアロガンが、先日の舞踏会にてニカ様に一目惚れしたようで、快諾していただければ大変ありがたく思います」


「ちょっ、大兄様…」


慌てるアロガンを横に深々と父王に頭を下げるのは、ドヴァー国の第1王子であるエンガンだ。

それにつられて従者たちは一斉に頭を下げ、アロガンも照れながらそれに従う。


「ドヴァー国の王子であるアロガン様が、アジーン王国に来て下さること、心より感謝致します」


それに対して父王も感謝の言葉を述べ、ニカや従者たちはその言葉と共に頭を下げた。



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