その日、ニカは城から脱走することなく広い廊下を歩いていた。

目指すは父王のいる政務室だ。

急に呼び出しを受け、理由が分からないままにとりあえず向かうのだった。


「お父様、ニカです」

「入りなさい」


これまた大きな扉をノックして、入室の許可をもらう。

静かに扉を開ければ、こちらを優しそうに見る父王の姿があった。


「ニカ!なんだか久しいな」

「お父様が忙しすぎるから!ちゃんとご飯食べてるのかしら?」

「一応……」


「ちゃんと食べなきゃダメです!」と父王をたしなめてから、呼び出された本件を聞く。


すると、言葉を詰まらせた後父王は申し訳なさそうに口を開いた。


「実はだな、お前に結婚の話が来ている」

「結婚!?いったい誰と…」


色々と考えてみるものの、全く思い浮かばない。


「隣のドヴァー国の第3王子であるアロガン様だ」

「ドヴァー国の…」


それを聞き、ニカはドヴァー国の第3王子を思い浮かべた。


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