「………レゼ?」


時たま漏れる辛そうな声は、ニカの聞き覚えのある声で、慌てて音のする部屋へと向かう。

静かにその部屋の扉を開ければ、ベッドに横になったレゼが苦しそうに荒く息をしていた。


「レゼ!!どうしたの!?」


額に手を当てれば、じんわりと伝わる熱さ。

その熱さがレゼの苦しさを表していた。


「待ってね、今お医者様を呼んでくるから」


城に戻り医者を連れてこようとしたニカの腕を、レゼの熱い手がぐっと掴む。


意識があったことに驚いたニカだったが、何か言いたそうなレゼを視界に入れると、話を聞くためにレゼの顔の近くへと顔を寄せた。


「医者はいいから、移る前にどっか行って」


「どこかって、こんなレゼ置いてどこにも行けないでしょ!」


やっぱり医者を呼んで来ようとするニカだったが、レゼはそれを全力で拒否する。


その本気の拒絶は悪戯にレゼの体力を奪うだけだと考えたニカは医者を呼ぶのを諦め、レゼに断りを入れてから小屋の中に使えそうな物はないか探し始めた。


小屋には生活感が一切なく、薬はおろか食べ物なども一切ない。

むしろよくベッドがあったものだと思えるぐらいにその小屋は何もなかった。


ニカは自分の服を見下ろすと、スカートの裾をビリビリと破る。

そのまま外へと向かうと、小さな川へと向かい、破った布を冷たい川の水にさらした。