「レゼ!いる!?」


いつもの場所へと向かうものの、そこにレゼの姿はない。

まだ来てないだけかと思い暫く待ってみたものの、レゼが来る気配は一向になく、毎回会う時間になってもそれは同様だった。


「レゼ、もう来ないのかなぁ…雨の日に行けないって伝えられてなかったから、怒っちゃったのかもしれない」


しゅんと落ち込み考えるニカの元へ、一つの小さな影が近づく。

その気配に気付いて顔を向ければ、子ギツネがこちらにすり寄って来た。


「あなた、いつもレゼの近くにいる…」


そっと手を伸ばせば、スリスリと鼻を手に擦り付けてくる。

その愛らしさに頭を撫でようとしたが、子ギツネがニカの服の袖を口に咥えたことでそれは叶わなかった。


「どうしたの?」


袖を引っ張ってどこかへ行こうとする子ギツネにニカは下ろしていた腰をあげた。


その姿を確認した子ギツネは袖を離すと、こっちに来いと言わんばかりにニカを見ては少しずつ森の奥へと進んで行く。


その子ギツネの様子を不思議に思ったニカは、誘われるように森の奥へと子ギツネの跡を追いかけていった。